庄内弁の文法と発音にも特徴がみられる
格
主格 | が |
対格 | どご、ば |
与格 | さ |
属格 | の |
位格 | で |
例
わがやったあんだろ? ⇒ 貴方がやったんでしょう?
雲が雨どご降らせる ⇒ 雲が雨を降らせる
せっかぐ実った実どご、鳥さかいっだ。 ⇒ せっかく実った実を鳥に食べられた。
米どごかいさ店さいぐ ⇒ 米を買いに店に行く
だだははだげさいっだ ⇒ 親父は畑にいます
主格の「が」は省略される場合がある。 熱でる⇒熱が出る
対格の「どご」「ば」は省略される場合がある。 咳する⇒咳をする
省略形
「れ」が「い」に置き換わる場合がある | ~~される⇒~~さいる、使われる⇒使わいだ |
「~~している」が「った」に置き換わる場合がある | 植えてある⇒植わった、書いてある⇒書かった、来ている⇒きった |
「~~くれ」が「~~けれ」に置き換わる場合がある | してくれればいい⇒してければい、食ってくれ⇒くてけれ |
音便
単語の2番目の音が濁音の場合、緩く小さく「ん音便」化する。
ばば⇒ばんば、幅⇒はんば、はずれ⇒はんずれ
繰り返し
同じ音を繰り返して状態を表現する言葉が多い。繋げて「と言う」の意味を持つ「でゅう」「ってゆぅ」を付けると例の「まぐまぐでぃゅう」になる。
まぐまぐ | もやもやした状態 |
もちゃもちゃ | 込み合った状態 |
はかはか | 不安定でハラハラする状態 |
とかとか | 足元がふらつく状態 |
にかにか | ニヤニヤと嘲笑っている状態 |
ぱやぱや | 浮ついて落ち着かない状態 |
てかてか | 反射して光る状態 |
ねかねか | 根粘着性がある状態 |
がおがお | 息苦しい状態 |
へかへか | 調子に乗る様 |
わちゃわちゃ | 急いでいる様子、ごちゃ混ぜになっている様子 |
ねろねろ | 粘着物が混ざり合った状態 |
他にもたくさんあるので、このぐらいで割愛します
更に、音の頭を変えて重ねる言葉もあり
したくた | 急いで慌てる様を表す |
とからまから | ちぐはぐする様子 |
もちゃくちゃ | ごちゃごちゃする様 |
もったらくったら | もたもた、のそのそする様 |
なんてかんて | なんだかんだ、全部 |
なんでろかんでろ | あれだったりこれだったり、ごっちゃまぜで全部 |
発音の特徴
基本的にイントネーションは標準語に準ずる。他の東北弁に見られる「ズーズー弁」的な音の抑揚はない。
ただ、発音においては寒い気候のせいなのか口を大きく開かない事が影響して音が変わるケースがある。
法則 | 標準語 | 庄内弁 |
「え」が「い」に変換される場合がある | いっぱい | えっぺ |
「せ」がゆるく「しぇ」に変換される場合がある | 切ない・先生 | しぇづね・せんしぇ |
「う」が鼻母音の「ん」(ŋ)に置き換わる場合がある | 旨い | んめぇ |
「そう」が鼻母音の「ん」(ŋ)に置き換わる場合がある | そうだ | んだ |
「uo」が「ou」に変換される場合がある | 鶴岡(つるおか) | つろうが |
「oo」が「o」に省略される場合がある | 大山(おおやま) | おぅやま |
「ai」が「e」に置き換わる場合がある | ない・汚い・ちっちゃい・高い | ね・汚ね・ちっちぇ・たっげ(たっけ) |
「え」小さく「ぃ」を伴う発音になる場合がある | 駅 | ぃえぎ |
「か」行が鼻濁音になる場合がある | いいから・ぬかるむ | いぃがら・ぬがるむ |
「た」行が濁音になる場合がある | 蛸 | たご |
「た」行が鼻濁音になる場合がある | いただく | いだだぐ |
「し」と「す」の区別が曖昧になる | 知らない | (「し」「す」の中間)らね |
「ち」と「つ」の区別が曖昧になる | 地下鉄 | (「ち」と「つ」の中間)かてつ |
促音が消滅する場合がある | 撮ってくれ・買ってくれ | とてくれ・かてくれ |
語尾の「う」が消滅する場合がある | 行こう | 行こ(ぅ) |
「ii」は「i」に変換される場合が多い | 大きい | 大っき(ぃ) |
以上が大まかな庄内弁の文法と発音じゃ。
確かに、父のしゃべり方にそういう特徴が出る事があります。特に「ガギグゲゴ」が鼻濁音になる傾向にあります。でも、優しい響きなので好きです。「ガギグゲゴ」が濁音になる時は自己主張や強調が入る場合が多い傾向にありますね。
でも、庄内出身ならイントネーションが標準語とほぼ同じなので、お父さんは訛りで苦労したことはないんじゃろ?
ええ、そのようです。単語そのものが違うケースが少しだけあったみたいですけど……。